前回(第6回)の内容
今回(第7回)の内容
今回は、国内法規関係を扱います。こちらも、かなり幅広い法領域の対策が必要となります。
このうち、赤字の部分は、共通テキストで紹介した弁理士試験テキスト、IPePlatでかなり賄うことができますので、今回は残された黒字の部分を記載します。
<民法>
公務員試験 最初でつまずかない民法 Ⅰ、Ⅱ(実務教育出版)
なぜ公務員試験の対策本を選んだかというと、実際に色々手に取ってみた中で、初学者向けに平易な言葉で直感的にわかりやすく記載されていたためです。 実は最初に購入した書籍は民法の中で代表候補に挙がる専門書でしたが、ほとんど理解できませんでした。
一般に民法は一般市民やあらゆる企業活動に密接に関わる法律でありながら、民法の解説書は司法試験対策や法学者向けの専門書が多く、内容も非常に難解です。 ところが、公務員試験を受ける人はたくさんの分野を短期間で学習しなければならず、そのような民法に真正面から向き合って勉強する時間などとれないようです。 そこで、公務員試験受験者向けに、とっつきやすい本をということで出版された書籍がこれになります。(それでもかなりボリュームはありますが…) 同じことは知財検定1級も同様にあてはまりますので、自分にとってわかりやすい本で効率的に学習しましょう。
<民事訴訟法>
ファーストトラックシリーズ5 民事訴訟法(弘文堂)
民法と同じように、民事訴訟法も専門書で挫折し、極端にわかりやすい本書で基本的な部分を学習しました。 かなり個性的なキャラクターを用いた実例で、問題を起こしまくるストーリーを実例にして訴訟対応の基礎がわかります。 こちらも真正面からやると挫折すると思うので、わかりやすい本で対策しましょう。
知財検定1級では、唐突に「弁論主義の第3テーゼ」などという、「残酷な天使のテーゼ」のような意味の分からない問題が出題されます。 しかし、この書籍でもきちんと理解できたので、大丈夫だと思います。 ただし、「裁判籍(管轄)」の問題だけは、特許法特有の「一審級省略して東京高等裁判所(知財高裁)へ提訴」の例外規定などはこの本ではわからないので、 特許法で学習するか、サイトで検索して注意深く調べてください。 1級では、問題の枝の訴訟内容(民事訴訟か知財訴訟か(特許か商標か))と審級によって、民訴法/特許法どちらが裁判籍を決めるかが枝ごとにわかれて正誤が変わるきわどい問題が頻出されており、悩ましい部分です。 あと、どの県がどの管轄区かという地理的知識も必要になります。(民事訴訟の高等裁判所の裁判籍が変わります。) ※当ブログ著者の自分も、まだ正確に理解できてないと思います。
<独占禁止法>
独占禁止法については、今まで公正取引委員会という普段縁のない組織が摘発する、類型パターンが覚えにくい自分にとって非常にやっかいな存在でした。 しかし、現在の2022年9月までつい最近放送されたテレビドラマ「競争の番人」が、その公正取引委員会を主人公に独占禁止法を取り扱うドラマで、それを見ながら「これは談合」「これは不当廉売」などと類型当てゲームのようになってしまいました。試験勉強中にやってくれてたらなと悔やまれてなりません。
独禁法の授業をはじめます(商事法務)
https://www.shojihomu.co.jp/publishing/details?publish_id=3205&cd=2877&state=new_and_already
書籍の著者は公正取引委員会事務総長であり、本家本元の方が、独禁法の全体像とその根幹を、ほぼ条文なしでやさしく語る授業形式の書籍です。 書店で色々手に取った中で、最もわかりやすいと感じた本でした。 独占禁止法の骨格を学ぶには、非常に良い本だと思います。
ところがどっこい、知財1級は「そうは問屋が卸さない」というか、「知財契約の条項の規定(制限)内容」「標準化」「パテントプール」「FRAND」という非常に難解な部分を絡めて、きわどい路線で出題してきます。 したがって、知財関連で独禁法も扱う難しい専門書をどうしても読まなければならなくなります。
ライセンス契約 ビジネス法務体系Ⅰ(日本評論社)
前回(第6回)の契約の部分でも紹介した本です。1級試験では避けて通れない、「標準化活動とパテントプール」「契約と独占禁止法との関係」まで掘り下げられていますので、この一冊で攻略難問領域を広範にカバーしているのではないかと思います。
実務 知的財産権と独禁法・海外競争法(法律文化社)
まさにタイトル通りの内容です。海外競争法(反トラスト法等)は一旦無視してかまわないので、まずは知的財産権と日本の独禁法だけおさえてください。 はっきり言って難しいですが、この内容から出題されるので仕方ありません。 特別用語として、「パテント・トロール問題」「ホールドアップ」「FRAND宣言」などは特徴的で出やすいので、その辺は過去問と照らし合わせてキーワードを確認するとよいのではないかと思います。 ※読まないとなんのことかわからない用語ですよね…
その他、公正取引委員会が示している以下のオリジナルの指針があり、類型が挙げられていますので、参考にしてください。
優越的地位の濫用に関する独占禁止法の考え方(公正取引委員会)
https://www.jftc.go.jp/hourei_files/yuuetsutekichii.pdf
標準化に伴うパテントプールの形成等に関する独占禁止法の考え方(公正取引委員会)
<関税法>
関税法については、方々探した挙句、1級対策にちょうど良い書籍を見つけることができなかったため、過去問と知的財産権法文集に出ている関税法の条文を解析して、自分用のレジュメを作りました。 ※この記事を読んだ方でもしよい本があれば、匿名でもよいのでコメントいただけると嬉しいです。
関税法を扱う試験は通関士が該当しそうですが、関係ない部分も大量にあり、効率がよくありません。 試験対策で押さえたいのは、輸出入に伴う侵害品の差止・積戻し、見本検査(分解等)がどこまで可能か、期間関係の規定、担保のための供託などの一連の水際対策の内容・手続についてです。 民事訴訟の差止請求と異なり、裁判所の判決と執行手続きを経ずに直接税関に手続できることなどが挙げられます。
今検索してみたところ、以下の論稿がまとまっていそうです。ただし、平成25年度と古く法改正されている可能性が高いため、正確な規定は最新条文を参照してください。
日本の水際取締の知財紛争解決手段としての活用(貿易円滑化対策委員会)
- 2022/09/25 追記 本屋さんで見てみたところ、やはり通関士のテキストが正確で網羅しているようでした。関税法の1~2問程度攻略のためにこれをやるのか?という気がしないでもないですが、 知財1級は合格基準が80%以上ととても難易度が高く、少しでも点数を稼げるところは取りたい部分ですので、一応掲載しておきます。
通関士教科書 通関士 完全攻略ガイド(翔泳社)
<弁理士法>
なぜか弁理士試験ではなく、知財1級で出題される弁理士法です。弁理士は合格してから当然勉強するから、実務担当として弁理士に依頼できる/できない内容は自分で勉強しろということでしょうか。 弁理士法は条文数も少なく、特に重要なのは「弁理士に依頼できる/できない内容」ですので、専門書を買うまでもなく、条文を直接見てもらうだけでよいかと思います。
特に重要なのは以下のあたりです。
以上、国内規定関係についてでした。 次回は最後の難関、海外法規・条約関係について記載します。